週刊ニュースまとめ(2020年5月31日)
緊急事態宣言が解除され、日本はそろりと動き出しましたが、元通りになるのか、ニューノーマルが到来するのか、先行きは不透明です。
中国の全人代は閉幕しましたが、米中は、香港版国家安全法、ウイグル人権法、航行の自由作戦など話題に事欠きません。新型コロナによって、はからずも(?)米中のデカップリングが急速に進みました。米国の中で中国と一戦交えたいと考える人たちは、こんなチャンスは二度とないと思っているかもしれません。
来週は、6月4日の香港に注目ですね。
【中国:政治】全人代が閉幕
中国の第13期全国人民代表大会(全人代)第3回会議は、7日間の会期を終えて閉幕しました。最終日には、「香港版国家安全法」の制定案が可決・承認されました。
また、中国初となる民法典も可決・成立しました。民法典は、総則、物権編、契約編など7編1260条から構成され、来年1月1日から施行されます。物件編では、「居住権」の概念を新たに明示しています。ちなみに、日本では民法改正により、今年4月から「配偶者居住権」が認められるようになったそうです。
- 新型コロナの影響で、2か月半遅れで開幕し、例年より短い7日間で閉幕
- 李克強首相による政府活動報告で、GDP成長率目標は発表されず
- 財政赤字のGDP比を前年から0.8ポイント引き上げ3.6%に
- 国防予算は前年比6.6%増(前年は7.5%増)
- 「香港版国家安全法」制定案が可決
- 民法典が可決・成立
【米中:外交】香港、ウイグル、南シナ海など
ポンペオ米国務長官は27日、「香港版国家安全法」が全人代で審議されていることにより、香港は自治を維持できないと議会に報告しました。
米下院は27日、ウイグル人権法案を可決しました。上院も通過済みなので、大統領が署名すれば成立します。同法案は、大統領に対し、ウイグル族弾圧に係った中国当局者らを特定する報告書を議会に提出し、資産凍結やビザ取り消しなどの制裁を科すよう求める内容です。
米海軍は28日、南シナ海パラセル(西沙)諸島付近の海域で、アーレイバーク級ミサイル駆逐艦「マスティン」を航行させ、いわゆる「航行の自由」作戦を実施しました。
【中国:安保】国産空母「山東」が就役後初の海上訓練
中国国防部の任国強報道官は29日の記者会見で、中国初の国産空母「山東」が海上訓練を実施中であることを明らかにしました。これに先立ち、CCTVの軍事チャンネルは、「山東」の海上訓練を映像つきで報じました。J15戦闘機が甲板上に見えます。「山東」は昨年12月に就役して以来、初めての海上訓練。
(CCTV7:正午国防軍軍事)
https://tv.cctv.com/live/cctv7/index.shtml?spm=C28340.PbtJD1QH3ct0.S23548.1759&stime=1590724800&etime=1590726720&type=lbacks
【香港:政治】27日の抗議活動で300人以上が逮捕
香港のキャリー・ラム行政長官は26日の定例記者会見で、「国家安全についての立法は中央の権利だ」と述べました。
国家安全法の制定については、中央と香港政府が連絡を取りながら進めているはずなので当然の発言ですが、今回の動きについては、中央政府がキャリー・ラム行政長官を見限ったということなのか?それとも、中央が香港政府に協力を要請したということなのか?中央政府と香港政府の関係性も気になるところです。
27日、香港立法会で「国歌条例案」が審議されるのに合わせて、正午から銅鑼湾・セントラルなどに抗議者が集結。多くの場所で、国歌法及び国家安全法に反対する抗議活動が行われました。警察により300人以上が逮捕されました。
「国歌条例案」の総括質疑は28日も続き、梁君彦(アンドリュー・リョン)議長は午後6時半過ぎに審議を打ち切り、第二読会の終了を宣言しました。
【中国:経済】中国人民銀行が公開市場操作で市場に資金を供給
中国人民銀行は、26日から29日にかけて、リバースレポにより資金を市場に供給する公開市場操作を実施しました。7日物で、金利は2.20%に据え置き、供給額は4日間で計6700億元にのぼりました。
【日中:外交】香港の国家安全法制導入に対し「深く憂慮」
中国による香港への国家安全法制導入に関し、茂木外務大臣は26日、「状況を注視するだけでなく、しっかり中国とやりとりをしなければならない問題だ」と述べました。菅官房長官は28日、「深く憂慮している」と表明。秋葉外務事務次官は、中国の孔鉉佑駐日大使を外務省に呼び、日本の立場を伝えました。
香港版国家安全法への国際的な批判がある中、延期となっている習近平国家主席の訪日の行方が気になります。中国の全国政治協商会議の郭報道官は、20日の記者会見で「双方は最も適切な時期、環境、雰囲気のもとで訪問が行われるべきだと認識している」と述べましたが、全人代の期間中に中国側から特段の言及はありませんでした。一方、自民党の外交部会などは29日、合同会議を開き、習主席の訪日について再検討も含め慎重に検討するよう政府に求めています。
遊川先生は、世界経済評論webコラムで「一致して国賓訪問を実現させるモーメンタムは消失した」、「日中関係は再び先が見通せなくなった」と指摘しています。
(習近平国賓来日はいつ実現するのか:遊川和郎)
http://www.world-economic-review.jp/impact/article1761.html
【日本:コロナ】日本の緊急事態宣言が全面解除
日本政府は25日、北海道、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県の5都道府県の緊急事態宣言を解除することを決定しました。これで全面解除です。
東京都は、4段階で徐々に緩和する「ロードマップ」を発表しました。そのせいか、解除による解放感はほとんど感じないですね。
【日本:コロナ】過去最大の第2次補正予算案
27日、2020年度第2次補正予算案が閣議決定されました。総額は、補正予算として過去最大の31兆3114億円で、金額が大きい項目は、資金繰り支援の強化(11兆6390億円)、医療提供体制などの強化(2兆9892億円)、家賃支援給付金の創設(2兆242億円)などで、予備費は10兆円に増額されました。
【日本:経済】失業率・有効求人倍率が悪化
日本の4月の失業率は2.6%と前月から0.1ポイント悪化。有効求人倍率は0.07ポイント低下の1.32倍になりました。
米国の失業率が3月の4.4%から4月の14.7%まで悪化したことと比べると、(労働市場の構造の違いも大きいと思いますが)まだたいしたことないようにみえます。リーマンショックとの比較で、日本の失業率も6.1%(隠れ失業者を含めれば11.3%)まで悪化するとの試算もありますが、どうなるでしょうか。
(失業者265万人増で失業率は戦後最悪の6%台:木内登英)
https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2020/fis/kiuchi/0511