週刊ニュースまとめ(2020年6月21日)
【中国:香港】「香港国家安全維持法」の概要が明らかに
中国の全人代常務委員会は18日、「香港国家安全維持法」の草案の審議を始めました。21日付「人民日報」には、同草案の説明が掲載されました。要点は次の通りです。
- 禁止される行為は、国家の分裂、国家政権の転覆、テロ活動、外国及び域外勢力が香港事務に関与することの4項目。
- 香港政府は「国家安全維持委員会」を設立し、国家安全の維持に主要な責任を担う。行政長官をトップに、政務長官、財政長官、司法長官、保安局長、警務処長、警務処の国家安全部門の責任者、入境事務処長、海関長、行政長官弁公室主任がメンバーに含まれる。同委員会のもとに秘書処を設置し、秘書長は行政長官が指名し、中央政府が任命する。
- 国家安全に関する案件については、行政長官が裁判官を指名する。
- 中央政府は香港に「国家安全維持公署」を設立し、監督・指導、情報収集、案件の処理にあたる。同公署及び国の関連部門は、特定の状態の極めて少数の案件に対し管轄権を行使する。
- 香港の法律と本法が一致しない場合、本法の規定を適用する。
「香港基本法」第23条で列挙された犯罪項目は7つでしたが、4つに絞ってきました。具体的な犯罪構成要件や刑罰については明らかになっていません。(⇒ 香港基本法について その2:国家安全に関する第23条)
香港政府が設立する「国家安全維持委員会」が主要な責任を負い、中央の出先機関である「国家安全維持公署」がこれを監督・指導するというのが、基本的構図のようですが、「一国二制度」の文脈では、公署の権限が実際にどの程度になるかが重要ですね。
次の全人代常務委員会は、今月28日から30日の日程で開催される予定です。
【中国:香港】G7外相が香港の「国家安全維持法」に「重大な懸念」を表明
G7外相は17日、香港問題について声明を出し、香港の「国家安全維持法」を導入する中国政府の決定に「重大な懸念」を表明しました。英中共同声明にも言及しています。
我々,米国,カナダ,フランス,ドイツ,イタリア,日本,英国の外務大臣及びEU上級代表は,香港に関する国家安全法を制定するとの中国の決定に関し,重大な懸念を強調する。
中国による決定は,香港基本法,及び,法的拘束力を有して国連に登録されている英中共同声明の諸原則の下での中国の国際的コミットメントと合致しないものである。提案されている国家安全法は,「一国二制度」の原則や香港の高度の自治を深刻に損なうおそれがある。この決定は香港を長年にわたり繁栄させ,成功させたシステムを危うくすることとなる。
開かれた討議,利害関係者との協議,そして香港において保護される権利や自由の尊重が不可欠である。
また,我々は,この行動が法の支配や独立した司法システムの存在により保護される全ての人民の基本的権利や自由を抑制し,脅かすことになると著しい懸念を有する。
我々は中国政府がこの決定を再考するよう強く求める。
【米中:外交】ポンペオと楊潔チがハワイで会談
ポンペオ米国務長官と中国の楊潔チ・共産党政治局員が17日、ハワイで会談しました。中国外交部の声明によると、楊氏は、米国は重要問題における中国の立場を尊重し、香港や台湾、新疆ウイグル自治区などの問題への介入を止め、両国の関係修復に努めるべきだと伝えました。
コロナ期間中、中国の外交はもっぱら電話会談でしたが、初めての直接外交は米国でした。
【米中:人権】トランプ大統領がウイグル人権法案に署名
トランプ米大統領は17日、ウイグル人権法案に署名しました。ウイグル族や他のイスラム教少数民族への弾圧の責任が認められる当局者が制裁の対象となり、資産凍結、入国ビザの取り消しや入国禁止などが科されます。
中国政府は18日、米国が同法を進めるなら報復すると反発しましたが、詳細は示していません。
【日本:安保】イージス・アショアの配備プロセスを停止
河野防衛大臣は15日、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」について、秋田県・山口県に配備するプロセスを停止すると発表しました。安倍総理は、「これ以上進めるわけにはいかないと判断した。日本を守り抜いていくために必要な措置をしっかり議論していきたい」と述べました。
迎撃ミサイルのブースターに技術的な問題が見つかり、改修やコストに時間がかかるためとの説明がありましたが、そもそもミサイルの有効性や購入コストの問題、地元説明の杜撰さなどさまざまな問題が指摘されてきました。まずは、プロセスの停止ということで、撤回ではないので、二転三転する可能性もあります。米国との関係に注目です。
【香港:コロナ】香港の集合制限が51人以上に緩和
香港政府は16日、集合制限の禁止対象を従来の9人以上から51人以上に緩和すると発表しました(19日午前0時から実施)。飲食店での人数制限は撤廃されます。民主派は、制限令が継続されたことに対し、抗議活動に圧力をかけるためだと批判しています。
【中印:安保】中印が国境で衝突し死者
15日夜~16日、インド軍と中国人民解放軍の部隊が、ラダック付近の国境地帯で衝突しました。インド軍は16日、インド側の死者が20人に達したと発表しました。インドメディアは、中国側の死者数も数十人にのぼると報じました。
中印国境の小競り合いはめずらしくありませんが、死者が出たのは45年ぶりとも。ただ、死者が出る事態に至っても、双方ともに火器を使用しなかった(と報じられている)のは興味深いです。
【日本:安保】潜水艦が奄美の接続水域を潜航
防衛省は20日、外国潜水艦が18日に奄美大島の北東の接続水域内を潜ったまま西進したと発表しました。同省関係者によると、中国海軍の潜水艦とみられるとのこと。
国際法上、潜水艦は領海内では浮上して国旗を掲げなければならないが、接続水域(領海の外側12カイリ)を潜航することは禁じられていません。
【日本:コロナ】都道府県をまたぐ移動制限を解除
日本政府は18日、19日から都道府県をまたぐ移動の制限を解除する考えを明らかにしました。また、ベトナム、タイ、オーストラリア、ニュージーランドとの往来制限を緩和するための協議・調整を進めると表明しました。